血塗られたひな祭り

今日ってひな祭りの日だったのね。

googleのロゴがお雛様だったから気付けたけど、とーんと忘れる。

自分のひな祭りの思い出って一つの思い出が強烈過ぎてそれしか思い出せん。

多分、小学生に上がった頃だと思うけど裕福なA子ちゃんの家(磯野家のような縁側がある日本家屋)でひな祭りのお祝いをやったんだよね。 女の子達は他にも何人か来てて、A子ちゃん家の広ーい客間に入ったらテレビのCMでやってるような七段飾りの立派な雛人形が飾ってあったの。

ウチにあるのはこじんまりとした男雛と女雛だけだったから、子供心にすごくテンションは上がってた。

皆でワーキャー言いながら雛人形を見てて、A子ちゃんのお母さんがなんやかんや(お菓子かご馳走か何か食べ物だろうね)持ってきてくれて更に上がるテンション。

私も含めて呼ばれた子達はいくらテンションがあがってるとはいえ、よその家だから大人しくしてたんだよ。

そしたら急に、テンションが上がり過ぎたのか、興奮したA子ちゃんが全力疾走で客間を通り抜けて庭に飛び出してった。

ホントに一瞬の出来事で、自分達が輪になってモグモグなんかつまんでる目の前をキャッキャ飛び跳ねながら部屋の端に向かって、そこからヨーイドンのポーズをして一直線に庭へ。

「バッシャーーーン!!!」 とガラスの割れる音がしたかと思ったら、庭に窓枠ごとうつ伏せになってるA子ちゃん。

飛び散ったガラスの破片が庭に落ちてて、私達もあっけにとられてたんだけど、誰かが 「ギャッーーー!!」 っと悲鳴を上げた。

その声に駆け付けたA子ちゃんのお母さんも悲鳴を上げて、お祖母ちゃん、お爺ちゃん、お父さんとワラワラ大人が集まってきて、女の子の何人かがワンワン泣き出すような阿鼻叫喚。

私は驚き過ぎてボケーっとうつ伏せになってるA子ちゃんを見てたんだけど、A子ちゃんがむくりと起き上がったの。

そのままゆっくりとこちらを振り向くA子ちゃん。

「ギャッ」

っとまた誰かが叫び、パニックになったのか嗚咽混じりで泣き出す子達。

別の子が半狂乱になりながらも 「A子ちゃんが勝手に飛び出して行ったんだよー!」 と喚き出してる。

振り返ったA子ちゃんは顔面は血まみれだし、クルクルした短いくせっ毛は血でベットリしてて、黄色い着物の肩辺りも血まみれに。

A子ちゃんがうつ伏せになっていた地面には真っ赤になったガラス片が残ってた。

この思い出のおかげで他のひな祭りの記憶がちっとも上書きされない。

子供心に「あんなにはしゃいでたA子ちゃんが血塗れになってまった!」と、いうのはショッキングで何か嬉しい事があっても大はしゃぎする前に、A子ちゃんのあの「飛び跳ねながらの後ろ姿、からの血塗れの姿」が目に焼き付いてて、我を忘れるような大興奮は出来なかった。

あと、友達の子供とか小さな子が大興奮してるとそのままロケット花火みたいにビューっと飛んでいきやしないか心配になるから、毎度興奮してきたら「一旦落ち着きなさい」「深呼吸しなさい」とか言っちゃうわ。

なんか飛んできそうな勢いがあるんだよね、子供って。