「それは、アレだね」っていう、それだけで済ませられる便利な言葉

何年か前からジワジワと私の『言葉タンス』が整理できていない。『人名』引き出しにあるべき俳優さんの名前がなくなってたり、『言い回し語彙集~シンプル編~』引き出しにあったはずの簡単な言い回しがなかったり、タンスに入れておく必要のない言葉『動詞』が思い出せなかったり。

動詞が出てこなかった時は流石に友達から「引いた」という言葉を頂いたけど、あんまり危機感を感じてないんだよね。仕事関連の会話は別として親しい人との会話で何らかの言葉が出てこなくても、なんとかなるから。

何とかさせてくれてるのが指示詞のコソアド。(これ習った?小学生の時に習ってるらしいんだけど)

ものや事柄を表わす「これ、それ、あれ、(どれ)」、場所を表わす「ここ、そこ、あそこ、(どこ)」、ものや人(卑称)を表わす「こいつ、そいつ、あいつ、(どいつ)」、方向を表わす「こちら、そちら、あちら、(どちら)」および「こっち、そっち、あっち、(どっち)」(以上、名詞的)、名詞を修飾して指定する「この、その、あの、(どの)」、名詞を修飾し、状態を表わす「こんな、そんな、あんな、(どんな)」(以上、連体詞・形容詞的)、動詞・形容詞を修飾し、様態を表わす「こう、そう、ああ、(どう)」(副詞的)など。

~中略~

現場指示では、コの系列は話し手の勢力範囲(主に話し手の手の届く範囲)の対象、ソの系列は聞き手の勢力範囲(主に聞き手の手の届く範囲)の対象および話し手・聞き手からやや離れた場所にある対象、アの系列はそれ以上離れた場所にある対象を指し示す場合が多い(ただしさまざまな物理的・心理的要因により、この範囲は伸縮する)。

ー 引用元:指示詞とはコトバンク

便利だよね、これ。思い出せない言葉もだけど、長々と名称を言わなくて済むし、感情なんかも代弁できるからよく使ってしまう。特に最近はね。

例えばケース1~ママ友との付き合い(内容は作り話です)~

友達I子「最近さ、近所に住むO介君(7才)なんだけど。あっ、前に話したっけ?O介君ママのこと」
私「覚えてる。何かアレの時に腹が立ったとかどうとかって」
I子「そう、それ。で、そのO介君が最近っていうか前からちょっとアレな感じなんだよね」
私「うん」(前回の話から乱暴になってきてると解釈)
I子「この間もO介君が他のママさん達に石を投げたらしくてっさ~、ケガは無かったみたいなんだけどね。その場ですぐ一緒に居た他のお母さんがO介君に注意したらしいの。」
私「うん?O介君のお母さんは?」
I子「そう!居たのに、注意しないの!それ聞いて笑いながら「O介~ダメだって~」って言ってるだけだったらしいよ!」
私「あぁ~それはアレだね~」(怒らない人なんだね~、注意しない主義か知らんが危ないから止めてほしいね~も含む)
I子「本当に!他人の家のやり方に口を挟むつもりはないけどさ、あの人前もO介君がハチの巣つっつこうとしてるのにボーッと見てた事もあるしさ~。」
私「えっ!危ないじゃん!どうなったの?」
I子「止めたって!最初は遠かったから何やってんのか分かんなくてさ~。よくよく見たらハチの巣じゃん!?目の前にいるO介君ママは見てるだけだしさ~。自分の子じゃないけど、さすがに頭にきたよ~」
私「うわぁ~、もうアレだね」(自分の子が危険でも注意しないって理解できない)
I子「うん。その時も「ハチの巣をつついたらハチに刺されるから危ないよ」ってO介君に注意してO介君ママにも「これはハチの巣ですよ」って言ったんだけど、アノ返答だった」
私「ハチの巣って分かっててのソレかぁ。何かもうアレだね~」(言っても意味がないね、付き合ってくの厳しいね。I子の子と仲が良いから心配だねを全て含んでるつもり)

この例だとコソアドが少ない方かも。会話の相手であるI子に実は話が通じてないのかな?と思うとこだけど、一度確認した事があるので通じてる。凄いのはアレだけで理解できるI子かもしれん。

なんかアレだねでほとんどの感想みたいなのが言えてしまえる上、自分にも相手にも都合のいいような解釈になるので、よく使ってしまうんだよね。

悲しい内容でも「それは......アレだね......(溜息交じりの小さい声)」(辛いね、と言いたいけど言葉にするのもためらう時に使ってしまう)
腹が立った内容でも「そりゃ、アレだわ!(興奮気味に)」(腹立つね!ムカツクね!)
笑える内容でも「wwwそれアレじゃんwww」(そのドジは無いわ~。予想つかんような落ちだわ~等々)
嬉しい内容だけはコソアドを使わずに表現してる。

書き出してみると、こんな事続けてて大丈夫?ってぐらいに使ってるわ。

私にとってはとても便利な言葉だけど、通じない相手もいる。通じる相手の方が少ないか。長い付き合いで親しいなら、通じるけど同じように長い付き合いで親しくても「あ~それはアレだね~」と言った途端「アレって?何?」と聞き返されると通用させてもらえない相手だなとこちらも悟る。
癖のように使ってるから、同じ相手に「アレでコレで」なんて言ってると「アレじゃ分からん!」と怒られる。
こういう時があるから何となくは言葉の整理も出来てるんだけどね。

便利なんだけど、便利過ぎて困るのが適当な返答やたいして話を聞いてない時。
こういう時も「あ~それはアレだね~」をよく使ってるから途中で「アレって何?」と聞かれると脳内の言葉タンスをひっくり返しながら『何の話だったけ?』と必死で思い出そうとしてる。恐ろしいな、と思うのは聞いてないのがバレるのはアレが通じる友人だけなんだよね。
言葉としては同じなのに何で聞いてない事や適当な返答ってバレるんだろ。エスパーか。

このまま使い続けるのもアレなので、そろそろアレしなかん。

覚えておきたい 美しい大和言葉

覚えておきたい 美しい大和言葉 (だいわ文庫) Kindle版

  • 日本の風土と暮らしから生まれた言霊。 千年以上にわたる日本人のDNAが込められた、大和言葉。美しく、優雅で、洒落た言葉の宝庫であり、語感や響きを目と耳で楽しめるものです。また、肌感覚で意味や内容が理解でき、思いも伝わりやすいという美点があります。 古人が残してくれた珠玉の言葉の数々は、心に彩りと潤いを与えてくれます。
Amazonで見る

知ってる言葉もあれば知らない言葉もある。改めて見ると大和言葉って綺麗なんだよね。使う時には滅茶苦茶にしてしまうんだけどね。おおらかな人ってことでいいか。