一度は愛しぬいた~麻婆豆腐

今日のお昼は昨晩の残りのマズイ麻婆豆腐とワカメスープだった。

幻のペペロンチーノ~焼きそば麺で母親の料理に大当たりがあるって話。だけど、大ハズレもあったわ。

麻婆豆腐ってマズイのあるのね。豆腐は生煮えで片栗粉はシャビシャビ。味もぼや~っとしてて豆腐が臭い。「こりゃぁ、まいった」と思いながら少し食べて後は処分してしまったんだけど、今日冷蔵庫を見たら、まだ残ってたわ。

お前、まだ居るんかっ!という落胆と怒り。
私が今食べないと、この麻婆豆腐は再度、夕食にしれ~っと並んでくる。全く手を出さないのは申し訳ないと思ってしまう性格からして、少し取り分けてみるものの「あ~やっぱり、まずい」と思う未来の自分が視える。
いっそ今、処分してしまうか。

そう思うと麻婆豆腐が大好きな私にとっては偲びない。

ある年の夏、二日に一回は中華料理屋に通い四川風麻婆豆腐を食べに行っていた。
毎月のお給料ではとても足りないので貯蓄用にまで手を出し、病的なほど通い詰め。何か薬物でも入ってんじゃない?って思う程、午後を回れば食べたくなる。
タチが悪い事に、ちょうどその頃は定時で仕事が上がれるほど暇だったので会社帰りに寄れてしまう。

夏が終わる頃にこの熱は冷めたが麻婆豆腐への執着は衰えず、自分で作ってやろうじゃないか!と意気込み、中華鍋から調味料、鉄鍋や花椒を挽く為にミルを買い込んでしまう。

 

結局は自分で何度、作っても全くお店の味には届く兆しすら無かったから、この熱も冷めていくんだけどね。

今、目の前にある麻婆豆腐はいくら落ちぶれた(味が落ちてる)とはいえ過去にあれほど熱を上げていた麻婆豆腐。処分はやっぱり偲びない、かと言って夕食に再登場されても「お前ぇ何で居る?」感は拭えないだろうし。

面倒だけど手を加えて(辛さで誤魔化し)みて不死鳥の如く、生き返らせようとしてみた。

  • 熱したゴマ油にキッチンバサミで刻んだ乾燥した鷹の爪を炒る。焦がさない!
  • 5cmぐらいの長ネギを縦にハサミを入れていき、細かく裂いたら横にハサミを入れみじん切りに。それも炒る。焦がさない!
  • 豆鼓醤と甜面醤を少し入れる。焦がさない!
  • チューブにんにく、しょうが少し投入。焦がさない!
  • 湯で溶いた鶏がらスープちょびっとで豆鼓醤達を溶かす。
  • 温めた落ちぶれ麻婆を投入。
  • 豆腐に火を入れる!という意識を持つ。
  • 汁気少なくなるのでスープを足してみる。
  • オイスターソースがあったので何となく入れてみる。
  • 片栗粉をスープで溶かし、投入。焼くんだ!という意識を持って片栗粉にしっかり火を入れる。(片栗粉はちゃんと火を通さないと時間が経ってからシャビシャビになる)
  • ラー油ドバドバ。
  • 花椒を挽くのが面倒だったので代わりに山椒を。

豆腐の臭みが消えてたから、昨日よりはマシじゃなかろうかと思いながらクソ重トレイに復活させてみた麻婆とワカメの中華スープ(これ本当に調理楽)、白米をのせて仕事部屋に持っていった。

今ちょうど「おしん」をNHKオンデマンドで見てて、時間が空けば見てるのね。
止まらないのよ。一話15分だから、ちょっと休憩にもいいし。

で、動画をノートPCで見てるんだけど仕事場に置いてたから(寝る時は自分の部屋へ)そこで食べようと思ってね。いつもは仕事部屋で食べるの嫌だけど、「おしん」だから。

この仕事部屋のドアには猫の出入り用にゴムを張ってあるの。ドア上部にある戸当たりとカーテンレールに長いゴムを張って出入りに押すだけでいいようにと、勝手に閉じるように。

パカーンとドアが開かないから、出入りする時にドアの取っ手が家着にしているカーディガンのポッケによく引っ掛かる。

この時も引っ掛かった。「またか」と思い、クソ重トレイを片手に持ちもう片手でポッケを引っ張る。

もう分かる展開だわね。

片手では持てないクソ重トレイが斜めになり「あっ」の一瞬で全ての皿が床に。タイルカーペットを敷いてあるので皿は割れなかったけど。

あーいう時って何で「やれる!」って思うんだろ。ただでさえ食品を載せてなくても片手では持てないトレイなのに、「一瞬だからっ」という訳の分からない理由で一瞬では収まってない時(一瞬)手を離してみてこの惨状。

無残に飛び散った麻婆豆腐とワカメスープ。白米は綺麗に180度ひっくり返ってる。幸いだと思ったのはPC周辺じゃなかった事。
こんな時に限って、何か知らんが猫達がワラワラ集まってくる。

サバコは匂いを嗅ぐなり、惨状一帯を砂かけ動作開始。
チャコもウロチョロしながら、「何や!何や!」と言っているのか張り切ったデカい声でニャーニャー鳴いてる。

何だろうね~。誰にあたればいいのか。「おしん」か。「落ちぶれ麻婆」か。ゴムか。カーディガンか。そもそもクソ重いと分かっていながら買ってしまったトレイを生来の貧乏性でいつまでも使い続けていた私自身か。

食事は抜いて、ガッツリ匂いとシミがついたマットを全部はがし風呂場で洗って干して、寝たよね。
こんな時は寝るしかない。
天気が良くてよかったって思うしかない。
「おしん」も無茶苦茶、辛抱してんだからこんな事で落ち込んでいられない。

惜しむべくは、なんかそれっぽく再調理した落ちぶれ麻婆が結局、処分されてしまったという運命を辿ってしまった事。あいつが再度、栄光を手に入れたのか、それが今となれば分からない事が悔やまれる。